優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「あ、もしもし、志木(しき)? ちょっと頼みがあるんだけど、今から行ってもいい?」

 相手は『志木』という名前らしく、都合を聞いた郁斗は何度か会話を交わすと電話を切って笑顔を浮かべ、

「さてと、それじゃあこれから出掛けよっか」

 もうすぐ午前一時を回るという、普通ならば寝る時間であろう時刻から出掛けようと言ったのだ。

「あの、今からですか?」
「うん」
「えっと、どちらへ?」
「ああ、志木っていう知り合いの美容師のところだよ。志木は完全な夜型人間だから、今からの方が都合良いんだよ」
「美容師さんなのに、夜型人間なんですか?」
「あー志木は今、色々あって無職なんだ。だから基本昼間は寝てるんだよ」
「そ、そうなんですね」
「美澄、小竹、お前らはもう帰っていいよ。明日は小竹が担当だよな? 俺、昼から出掛けるからそれまでには来ててね」
「はい、分かりました、では、今日のところは失礼します」
「それじゃあ郁斗さん、詩歌さん、失礼します」

 こうして郁斗に帰っていいと言われた美澄と小竹はひと足先にマンションを後にし、二人から遅れる事約十分、詩歌と郁斗も志木の自宅へと出かけて行った。
< 88 / 192 >

この作品をシェア

pagetop