優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 言われた通り、浴室のシャワーで傷口を洗った詩歌はストッキングを脱いだ素足でリビングへと戻って行く。

 ただ、人様の家にお邪魔をしているのに素足という事に気が引けてしまい、申し訳無さそうな表情を浮かべていた。

「どうかした?」
「あの、すみません……素足で……」
「ああ、そんな事? っていうか寧ろスリッパとか無くてごめんね。脚冷えるよね?」
「いえ、そんな事ないです! 大丈夫です!」
「そお? あ、それじゃあこれ掛けておきなよ」

 そう言って郁斗は側に置いてあった黒いブランケットを手渡した。

「すみません、ありがとうございます。お借りします」

 再びソファーに座った詩歌は借りたブランケットを掛けようとするも、

「あ、ちょっと待って。その前に、傷口見せてごらん?」

 郁斗は制止して詩歌の手を掴むと、洗ってきた傷口を見せるよう要求した。

「え、あの、大丈夫です! 血は出てないし、傷も大した事無かったので」
「駄目だよ、きちんとしないと。ほら早く」

 傷口を見せるにはロングスカートを膝上まで捲り上げる必要があるので、詩歌は躊躇(ためら)っていた。

 しかし、ここで何度断っても郁斗が引かない事も分かったので、スカートの裾に手を掛けた詩歌は膝の傷が見える位置までゆっくりと捲り上げると、男の人に素足を見せるという行為が恥ずかしいのか頬を少し紅く染めて目を逸らす。
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