優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
《新たな情報、黛組の現在の動向を詳しく知りたい》

 そう素早く打ち込むと、間髪入れずに返信が返ってくる。

《今のところ新規情報無し。黛組は現在都内を拠点に関東全域で探りを入れてるようだ》

 その返信を見た郁斗の表情は険しいものへと変わっていく。

(……もうこっちまで来たか。随分と仕事が早いな)

 郁斗が思っていたよりも早く黛組の捜索範囲が広がっている事を知ると、今度はどこかへ電話をかけ始めた。

 一方の詩歌は、

「いきなりショートは抵抗あるだろ?」
「そ、そうですね……ずっとロングでしたから」
「ならボブくらいが妥当だな。ついでにパーマもかけとくか」
「あの、カラーリングも出来ますか?」
「ああ、出来る。何色にするか決まってんのか?」
「いえ……その、何色なら、似合いますかね?」
「……そうだな、アンタ、染めた経験もねぇんだろ?」
「はい」
「ならいきなり奇抜な色より無難な方がいいか……俺が決めていいのか?」
「はい、お願いします」
「了解。ま、時間かかるから、眠かったら寝ててもいいぞ」
「いえ、大丈夫です」

 カットとカラーとパーマを一度に行う事になり、初めこそ緊張から全く眠気を感じていなかった詩歌だったけれど、カットを終えて髪を洗い、乾かした後で再度調整、それが終わるとパーマをかける事に。

 じっとしている事や、志木は必要最低限しか話し掛けて来ない事もあって暇だった詩歌は徐々に眠くなってしまい、窓から光が差し始めた頃にはすっかり眠ってしまっていた。
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