ミステリアスな王太子は 花嫁候補の剣士令嬢を甘く攻め落とす【コルティア国物語Vol.1】
漆黒の闇が広がる中、簡易的なテントの中で、クリスティーナはふと目を覚ます。
疲れのせいか、ゴツゴツとした地面に薄い毛布を敷いただけの寝床でも、いつの間にかまどろんでいたらしい。
横になったまましばらくじっと目を凝らしていると、少しずつ闇に目が慣れてきた。
隣に眠るオーウェンとフィル。
そしてその奥には父のハリスの姿もある。
夜明けと共に一気に襲撃に向かう為、今は皆、体力の回復に努めていた。
夜明けまではまだ数時間ある。
だがクリスティーナは、なぜだか胸騒ぎがして目が冴えた。
(どうしたのかしら。何かが張り詰めているような気がする。それに異様なほど静か。まるで誰もが息を潜めているみたいに…)
そこまで考えた時、テントの入り口で小さくパキッと小枝が踏まれる音がした。
目を向けると、見張りをしているはずの兵がぐらりと倒れていくのが影で分かった。
クリスティーナはハッと息を詰め、枕元の短剣をそっと握りしめる。
ゆっくりと静かにテントの入り口から誰かが身を屈めて入って来た。
(落ち着いて、落ち着くのよクリスティーナ)
己に言い聞かせながら怪しい人影を目で追う。
(敵は一人?いや、違う。テントの外にあと二人)
冷静に状況を把握しながら、テントの奥へと進んでいく人物に目を凝らす。
ハリスが寝ているすぐ後ろまで来ると、ピタリと動きを止め、右手を大きく振りかざす。
今だ!とクリスティーナは毛布をはねのけると、敵に背後から飛びついて剣を喉元に当てた。
「敵襲!」
そう叫ぶクリスティーナの声よりも一瞬早く、オーウェンとフィル、そしてハリスも飛び起きた。
あっという間にテントから飛び出したオーウェンとフィルが、外にいた敵の兵二人を捕らえて戻って来る。
そしてクリスティーナが剣を突きつけて動きを封じていたもう一人も、すぐに縄で締め上げた。
時間にして三十秒足らず。
(え?もしやみんなも起きていたの?)
確かめるまでもなく、皆は平然としながら敵の三人をテントの真ん中に横たわらせた。
「連隊長、ご無事ですか?」
「ああ、もちろん。お前達は?」
「なんともありません」
そう言ってオーウェンは、同意を求めるようにクリスティーナとフィルに顔を向ける。
二人も大きく頷いた。
「しかし、こいつら。まるで連隊長のテントがここだと最初から分かっているようでしたね。他のテントは襲われている気配もありませんから」
「そうだな。中を確認もせず、一直線に私の背後まで来た。おそらく情報が漏れている」
「どうしましょう。吐かせましょうか?」
オーウェンが、縄を口に噛ませた三人に近寄ると、三人とも怯えたようにオーウェンを見上げる。
「いや、時間の無駄だ。それより作戦を練り直そう。ここにいる四人だけでな」
そう言ってハリスはオーウェン、フィル、最後にクリスティーナと目を合わせた。
疲れのせいか、ゴツゴツとした地面に薄い毛布を敷いただけの寝床でも、いつの間にかまどろんでいたらしい。
横になったまましばらくじっと目を凝らしていると、少しずつ闇に目が慣れてきた。
隣に眠るオーウェンとフィル。
そしてその奥には父のハリスの姿もある。
夜明けと共に一気に襲撃に向かう為、今は皆、体力の回復に努めていた。
夜明けまではまだ数時間ある。
だがクリスティーナは、なぜだか胸騒ぎがして目が冴えた。
(どうしたのかしら。何かが張り詰めているような気がする。それに異様なほど静か。まるで誰もが息を潜めているみたいに…)
そこまで考えた時、テントの入り口で小さくパキッと小枝が踏まれる音がした。
目を向けると、見張りをしているはずの兵がぐらりと倒れていくのが影で分かった。
クリスティーナはハッと息を詰め、枕元の短剣をそっと握りしめる。
ゆっくりと静かにテントの入り口から誰かが身を屈めて入って来た。
(落ち着いて、落ち着くのよクリスティーナ)
己に言い聞かせながら怪しい人影を目で追う。
(敵は一人?いや、違う。テントの外にあと二人)
冷静に状況を把握しながら、テントの奥へと進んでいく人物に目を凝らす。
ハリスが寝ているすぐ後ろまで来ると、ピタリと動きを止め、右手を大きく振りかざす。
今だ!とクリスティーナは毛布をはねのけると、敵に背後から飛びついて剣を喉元に当てた。
「敵襲!」
そう叫ぶクリスティーナの声よりも一瞬早く、オーウェンとフィル、そしてハリスも飛び起きた。
あっという間にテントから飛び出したオーウェンとフィルが、外にいた敵の兵二人を捕らえて戻って来る。
そしてクリスティーナが剣を突きつけて動きを封じていたもう一人も、すぐに縄で締め上げた。
時間にして三十秒足らず。
(え?もしやみんなも起きていたの?)
確かめるまでもなく、皆は平然としながら敵の三人をテントの真ん中に横たわらせた。
「連隊長、ご無事ですか?」
「ああ、もちろん。お前達は?」
「なんともありません」
そう言ってオーウェンは、同意を求めるようにクリスティーナとフィルに顔を向ける。
二人も大きく頷いた。
「しかし、こいつら。まるで連隊長のテントがここだと最初から分かっているようでしたね。他のテントは襲われている気配もありませんから」
「そうだな。中を確認もせず、一直線に私の背後まで来た。おそらく情報が漏れている」
「どうしましょう。吐かせましょうか?」
オーウェンが、縄を口に噛ませた三人に近寄ると、三人とも怯えたようにオーウェンを見上げる。
「いや、時間の無駄だ。それより作戦を練り直そう。ここにいる四人だけでな」
そう言ってハリスはオーウェン、フィル、最後にクリスティーナと目を合わせた。