ミステリアスな王太子は 花嫁候補の剣士令嬢を甘く攻め落とす【コルティア国物語Vol.1】
そんな日々が続き、あの日短く切ったクリスティーナの髪が肩下まで伸びた頃、ハリスはクリスティーナにある提案をした。
「王太子様の花嫁候補?どなたが、ですか?」
「だからお前だよ、クリスティーナ」
「…は?」
突拍子もない話に、クリスティーナはポカンとする。
「お父様、寝言は寝ている時におっしゃいませ。私が王太子様の花嫁になど、どこをどうやってもふさわしくありませんわよ?」
「分かっておる。これにはもちろん、裏があるのだ」
「裏…ですか?」
クリスティーナは目をきらりと光らせて、顔を寄せた。
「やれやれ。お前はこういう話ときたら、途端に目の色が変わるな」
「前置きは結構ですわ。早く本題を」
「分かったよ。実はお前も知っての通り、未だ我が国の状況は思わしくない。国王陛下が色々と手を打っておられるが、敵の動きも速く、なかなか取り押さえることが出来ない。そして我々はつい先日、ある情報を耳にした。敵のスパイが我が国の王宮に潜り込んだという、信じがたい内容のな」
「王宮に敵のスパイが?!」
これにはさすがのクリスティーナも声を上げて驚く。
「本当にそんな恐ろしいことが?」
「ああ。かなり信用出来る筋からの情報だ。そこで我々近衛隊は、王宮の警備を強化することにした。もちろん国王陛下と王妃陛下は、二十四時間つきっきりでお守りしているが、王太子殿下の警備も強化したいと思っている。そこでお前の出番だ」
クリスティーナはしたり顔で頷く。
「つまり、私に王太子殿下をお守りせよと。そうおっしゃるのね?お父様」
「ああ、そうだ。花嫁候補として王太子殿下につき添い、敵から殿下をお守りするのだ。出来るか?」
「もちろんですわ。私がやらずに誰が出来ますの?」
「そう言うと思ったよ」
早速張り切って腕まくりをするクリスティーナに、ハリスはやれやれと首をすくめる。
「お父様。お父様が大事にされている短剣を拝借してもよろしくて?肌見離さず持ち歩くには、短剣の方が都合がいいですもの」
「それは構わんが、肝心なことを忘れていないか?クリスティーナ」
肝心なこと?とクリスティーナは眉根を寄せる。
「王太子殿下の花嫁候補に化けるのだ。つまり、誰がどう見ても王太子妃にふさわしい令嬢にならねばならん。庭で剣を振り回すなど言語道断。綺麗なドレスを着て奥ゆかしく振る舞い、誰もが認めるレディになるのだ」
「…は?そ、そんなの、私には無理です!」
「ああ、そうか。なら、この話はなかったことにしよう」
さっさと背を向けて去ろうとすると、クリスティーナが悔しげに声を上げた。
「分かりましたわ。化けてみせますとも!向かうところ敵なしの花嫁候補に!」
背を向けたまま、ハリスはニヤリとほくそ笑んだ。
「王太子様の花嫁候補?どなたが、ですか?」
「だからお前だよ、クリスティーナ」
「…は?」
突拍子もない話に、クリスティーナはポカンとする。
「お父様、寝言は寝ている時におっしゃいませ。私が王太子様の花嫁になど、どこをどうやってもふさわしくありませんわよ?」
「分かっておる。これにはもちろん、裏があるのだ」
「裏…ですか?」
クリスティーナは目をきらりと光らせて、顔を寄せた。
「やれやれ。お前はこういう話ときたら、途端に目の色が変わるな」
「前置きは結構ですわ。早く本題を」
「分かったよ。実はお前も知っての通り、未だ我が国の状況は思わしくない。国王陛下が色々と手を打っておられるが、敵の動きも速く、なかなか取り押さえることが出来ない。そして我々はつい先日、ある情報を耳にした。敵のスパイが我が国の王宮に潜り込んだという、信じがたい内容のな」
「王宮に敵のスパイが?!」
これにはさすがのクリスティーナも声を上げて驚く。
「本当にそんな恐ろしいことが?」
「ああ。かなり信用出来る筋からの情報だ。そこで我々近衛隊は、王宮の警備を強化することにした。もちろん国王陛下と王妃陛下は、二十四時間つきっきりでお守りしているが、王太子殿下の警備も強化したいと思っている。そこでお前の出番だ」
クリスティーナはしたり顔で頷く。
「つまり、私に王太子殿下をお守りせよと。そうおっしゃるのね?お父様」
「ああ、そうだ。花嫁候補として王太子殿下につき添い、敵から殿下をお守りするのだ。出来るか?」
「もちろんですわ。私がやらずに誰が出来ますの?」
「そう言うと思ったよ」
早速張り切って腕まくりをするクリスティーナに、ハリスはやれやれと首をすくめる。
「お父様。お父様が大事にされている短剣を拝借してもよろしくて?肌見離さず持ち歩くには、短剣の方が都合がいいですもの」
「それは構わんが、肝心なことを忘れていないか?クリスティーナ」
肝心なこと?とクリスティーナは眉根を寄せる。
「王太子殿下の花嫁候補に化けるのだ。つまり、誰がどう見ても王太子妃にふさわしい令嬢にならねばならん。庭で剣を振り回すなど言語道断。綺麗なドレスを着て奥ゆかしく振る舞い、誰もが認めるレディになるのだ」
「…は?そ、そんなの、私には無理です!」
「ああ、そうか。なら、この話はなかったことにしよう」
さっさと背を向けて去ろうとすると、クリスティーナが悔しげに声を上げた。
「分かりましたわ。化けてみせますとも!向かうところ敵なしの花嫁候補に!」
背を向けたまま、ハリスはニヤリとほくそ笑んだ。