ミステリアスな王太子は 花嫁候補の剣士令嬢を甘く攻め落とす【コルティア国物語Vol.1】
「なんですって?明日から軍に戻るなんて、無茶です。お父様」
ようやくハリスが目を覚ました時には、ニ日が経っていた。
すぐにでも王宮に戻らなければならない。
そう言うとクリスティーナは目を向いて抗議した。
「たったのニ日では、まだ身体は回復しておりません。ましてや利き腕の右手にこのような深手を負っていては、剣も握れませんわ」
「だからといって、指揮官の私がいつまでも不在にする訳にはいかん。それほど情勢が悪化していることは、お前なら薄々気づいているのだろう?クリスティーナ」
小声で尋ねる父に、クリスティーナは小さく頷く。
どんなに国民が「大丈夫さ!我が国が優勢。じきに戦争も終わるってよ」と口々に話していても、それは敢えて流された噂であるとクリスティーナは確信していた。
そうでなければ、近衛連隊長の父が何日も帰って来なかったり、このような傷を負うことの説明がつかない。
「とにかく今日は国王陛下にご報告に行ってくるよ」
ベッドから下りて身支度を整えようとする父を、クリスティーナは慌てて止める。
「無茶です!お父様。まだ傷口も完全にはふさがっておりませんのに」
「クリスティーナ。これくらいの怪我はどうってことないんだ。戦場ではもっと悲惨な光景が広がっている。二本足で歩けるなら、これくらい怪我のうちに入らない」
「お父様!」
思わず大きな声を出すと、母とリリアンが何事かと部屋に現れた。
「あなた、どうなさったの?」
「お父様、まだ休んでいなければ…」
駆け寄る二人に、ハリスは穏やかな笑みを浮かべる。
「大丈夫だ。もうすっかり元気になったよ。少し王宮に顔を出したらすぐに戻る」
そう言ってハンガーから軍服のジャケットを取り左腕を通す。
右腕は首から布で吊っている状態で、腕を通すことが出来ない。
「ほら、こんな状態だってことを国王陛下に報告してくるよ。しばらくは戦場に赴くことも出来ないってね」
「そうよね。国王陛下も分かってくださるわ。慈悲深いお方ですもの」
「ああ、そうだな」
クリスティーナは父と母のやり取りをじっと黙って聞いている。
そして壁に掛けてある剣をニ本取り上げると、皆のあとを追って部屋を出た。
ようやくハリスが目を覚ました時には、ニ日が経っていた。
すぐにでも王宮に戻らなければならない。
そう言うとクリスティーナは目を向いて抗議した。
「たったのニ日では、まだ身体は回復しておりません。ましてや利き腕の右手にこのような深手を負っていては、剣も握れませんわ」
「だからといって、指揮官の私がいつまでも不在にする訳にはいかん。それほど情勢が悪化していることは、お前なら薄々気づいているのだろう?クリスティーナ」
小声で尋ねる父に、クリスティーナは小さく頷く。
どんなに国民が「大丈夫さ!我が国が優勢。じきに戦争も終わるってよ」と口々に話していても、それは敢えて流された噂であるとクリスティーナは確信していた。
そうでなければ、近衛連隊長の父が何日も帰って来なかったり、このような傷を負うことの説明がつかない。
「とにかく今日は国王陛下にご報告に行ってくるよ」
ベッドから下りて身支度を整えようとする父を、クリスティーナは慌てて止める。
「無茶です!お父様。まだ傷口も完全にはふさがっておりませんのに」
「クリスティーナ。これくらいの怪我はどうってことないんだ。戦場ではもっと悲惨な光景が広がっている。二本足で歩けるなら、これくらい怪我のうちに入らない」
「お父様!」
思わず大きな声を出すと、母とリリアンが何事かと部屋に現れた。
「あなた、どうなさったの?」
「お父様、まだ休んでいなければ…」
駆け寄る二人に、ハリスは穏やかな笑みを浮かべる。
「大丈夫だ。もうすっかり元気になったよ。少し王宮に顔を出したらすぐに戻る」
そう言ってハンガーから軍服のジャケットを取り左腕を通す。
右腕は首から布で吊っている状態で、腕を通すことが出来ない。
「ほら、こんな状態だってことを国王陛下に報告してくるよ。しばらくは戦場に赴くことも出来ないってね」
「そうよね。国王陛下も分かってくださるわ。慈悲深いお方ですもの」
「ああ、そうだな」
クリスティーナは父と母のやり取りをじっと黙って聞いている。
そして壁に掛けてある剣をニ本取り上げると、皆のあとを追って部屋を出た。