ミステリアスな王太子は 花嫁候補の剣士令嬢を甘く攻め落とす【コルティア国物語Vol.1】
一目散に西の大通りに向かい、いくつかの脇道を覗き込みながら馬を走らせていると、見慣れた馬車が乗り捨てられているのを見つけて慌てて手綱をさばく。
「リリアン!」
馬から飛び降りて馬車を覗き込むと、もぬけの殻の車内に白いハンカチが一枚落ちているのに気づいた。
可憐な花の刺繍は、間違いなくリリアンの手による物だった。
「リリアン…今どこに?」
込み上げる涙を堪えて立ち上がると、クリスティーナは馬の鼻先にリリアンのハンカチを差し出す。
「お願い、リリアンを探して」
促すと、馬はゆっくりと歩き出した。
小道を奥深く進み、更にいくつかの路地を曲がると、木造の小さな小屋が現れた。
「静かに待っていてね」
クリスティーナは馬の手綱を小屋の裏手の木の枝に結ぶと、足音を忍ばせて小屋に近づく。
ぐるっと全体を外から見渡すと、天井に高い位置に窓があった。
丸太を足場にすれば手が届きそうだ。
クリスティーナは慎重に丸太をいくつか登っていく。
ようやく窓の下まで辿り着くと、そっと中の様子をうかがった。
暗くてよく見えないが、大きな人影が見える。
(一人、二人…、敵は三人ね。リリアンは?)
大柄の男が三人、所在なげにウロウロしている後ろに目を凝らすと、リリアンが床に横たわっているのが見えた。
(リリアン!)
思わず声を上げそうになる。
リリアンは後ろ手に縛られ、口にも布を噛まされているようだった。
(可哀想に…。すぐに助けるからね!)
クリスティーナはグッと拳を握りしめると、素早く小屋のあちこちに目を向ける。
リリアンのすぐ後ろに小さな通用口があるのに気づくと、足音を忍ばせて丸太を下りた。
手頃な石を拾い上げると、小屋の入り口に向かって投げる。
コツン!という音に、男達が入り口から出て来た。
「なんだ?何の音だ?」
「分からん。気のせいじゃないか?」
二人が外をウロウロし始めると、クリスティーナは通用口をくぐって中に入る。
「リリアン…」
後ろから小さく呼びかけると、リリアンは目に涙をいっぱい溜めてクリスティーナを見上げた。
「しっ、静かにね」
そう言って口に結わえられた布を解き、縛られた縄を短剣で切り落とす。
小屋に残っている男が入り口の方に気を取られているのを確認すると、クリスティーナはリリアンを促して通用口から外に出た。
「お姉様!」
リリアンはクリスティーナに抱きつく。
クリスティーナもリリアンを抱きしめて頭をなでた。
「リリアン、怖かったでしょう。よく頑張ったわね。さあ、この馬で今すぐ逃げて」
「そんな、お姉様は?!」
「私のことはいいから。ほら、急いで!」
リリアンに手を貸して馬に跨らせ、手綱を枝から解いた時だった。
「あ!こいつ、いつの間に!」
男が声を上げて走って来る。
「リリアン、行きなさい!」
クリスティーナは手綱をパシンと叩いて馬を走らせた。
「お姉様!」
「私は大丈夫。大通りまで走るのよ!」
リリアンを見送ると、すぐさま後ろを振り返って短剣を握りしめる。
「リリアン!」
馬から飛び降りて馬車を覗き込むと、もぬけの殻の車内に白いハンカチが一枚落ちているのに気づいた。
可憐な花の刺繍は、間違いなくリリアンの手による物だった。
「リリアン…今どこに?」
込み上げる涙を堪えて立ち上がると、クリスティーナは馬の鼻先にリリアンのハンカチを差し出す。
「お願い、リリアンを探して」
促すと、馬はゆっくりと歩き出した。
小道を奥深く進み、更にいくつかの路地を曲がると、木造の小さな小屋が現れた。
「静かに待っていてね」
クリスティーナは馬の手綱を小屋の裏手の木の枝に結ぶと、足音を忍ばせて小屋に近づく。
ぐるっと全体を外から見渡すと、天井に高い位置に窓があった。
丸太を足場にすれば手が届きそうだ。
クリスティーナは慎重に丸太をいくつか登っていく。
ようやく窓の下まで辿り着くと、そっと中の様子をうかがった。
暗くてよく見えないが、大きな人影が見える。
(一人、二人…、敵は三人ね。リリアンは?)
大柄の男が三人、所在なげにウロウロしている後ろに目を凝らすと、リリアンが床に横たわっているのが見えた。
(リリアン!)
思わず声を上げそうになる。
リリアンは後ろ手に縛られ、口にも布を噛まされているようだった。
(可哀想に…。すぐに助けるからね!)
クリスティーナはグッと拳を握りしめると、素早く小屋のあちこちに目を向ける。
リリアンのすぐ後ろに小さな通用口があるのに気づくと、足音を忍ばせて丸太を下りた。
手頃な石を拾い上げると、小屋の入り口に向かって投げる。
コツン!という音に、男達が入り口から出て来た。
「なんだ?何の音だ?」
「分からん。気のせいじゃないか?」
二人が外をウロウロし始めると、クリスティーナは通用口をくぐって中に入る。
「リリアン…」
後ろから小さく呼びかけると、リリアンは目に涙をいっぱい溜めてクリスティーナを見上げた。
「しっ、静かにね」
そう言って口に結わえられた布を解き、縛られた縄を短剣で切り落とす。
小屋に残っている男が入り口の方に気を取られているのを確認すると、クリスティーナはリリアンを促して通用口から外に出た。
「お姉様!」
リリアンはクリスティーナに抱きつく。
クリスティーナもリリアンを抱きしめて頭をなでた。
「リリアン、怖かったでしょう。よく頑張ったわね。さあ、この馬で今すぐ逃げて」
「そんな、お姉様は?!」
「私のことはいいから。ほら、急いで!」
リリアンに手を貸して馬に跨らせ、手綱を枝から解いた時だった。
「あ!こいつ、いつの間に!」
男が声を上げて走って来る。
「リリアン、行きなさい!」
クリスティーナは手綱をパシンと叩いて馬を走らせた。
「お姉様!」
「私は大丈夫。大通りまで走るのよ!」
リリアンを見送ると、すぐさま後ろを振り返って短剣を握りしめる。