ミステリアスな王太子は 花嫁候補の剣士令嬢を甘く攻め落とす【コルティア国物語Vol.1】
「王太子様。この度は本当にありがとうございました」
「どういたしまして。またいつでも遊びにおいで」

翌朝。
屋敷に帰るリリアンを、クリスティーナとフィルが見送る。

「じゃあね、リリアン。気をつけて」
「ええ。ありがとう、お姉様。あのお話の続き、楽しみにしているわね」

そう言ってクリスティーナにウインクすると、リリアンは軽やかに馬車に乗り込んで去っていった。

「可愛らしいね。春風のような少女だな」

遠ざかる馬車を見ながら、フィルが頬を緩めて呟く。

「あら、フィルってああいう女の子がタイプなの?」
「ああ、そうだね」

あっさり頷くフィルに、クリスティーナは一瞬驚いてから目を伏せる。

「…って言ったらヤキモチ焼いてくれる?」
「は?!」

ニヤリと笑いかけられて、クリスティーナはうろたえた。

「ど、どうして私がヤキモチなんか…」
「本当に素直じゃないね。ところでリリアンが言ってた『あの話の続き』って何?」
「そそそれは、別に何でもないわ」
「何でもない割にはえらく動揺してるけど?」
「動揺なんてしてません!」
「じゃあ教えてよ。なんの話なの?」
「教えません!」

背を向けてスタスタと歩き始めたクリスティーナに、フィルはヤレヤレと肩をすくめた。
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