踏み込んだなら、最後。
士郎side




「なんで由季葉が普通にいるときは素っ気なくすんだよ、シロ」



引き留めるかのように、佳祐兄ちゃんが言ってきた。

あれから気を失うように眠ってしまって、僕はユキちゃんの涙を拭ってから部屋を出た今。



「…ダメなんだよ、会ったら」


「会ったらダメって、どういうことだ」


「……僕がダメなんだよ」


「は…?」


「じゃあ帰るから。また容態はメールで教えて」



帰る。
僕の家はずっとここだった。

ひまわり園しかなかった、僕の帰る場所なんか。



「シロにーちゃん!また帰ってきてくれる?」


「…忙しいからしばらくは無理かも」


「ええっ、じゃあいつ来てくれる?」


「んーっと、リョータが僕の背を抜かしたら?」


「まだぜんぜんじゃん!」



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