踏み込んだなら、最後。




「どーぞ。ご勝手に」


「…ずいぶん余裕なんですね」


「…実際そうでもないけど」



焦ってるよ。
だからあんな強引にも奪った。


ただ、これだけは言える。


どんなにきみに優しくされたところで、どんなにきみのことを好きになったところで、ユキちゃんは必ず僕のところにくる。

僕たちが今まで積み重ねてきた時間って、他人が簡単に割って入れるようなぬるいものじゃねーんだよ。


僕がキスをしただけで必死に応えて、「もっともっと」なんてねだってきたよ。


今後きみと同じことをしようとするたびに、あの子は今日のことを思い出すんだ。



「きみこそ、被りつづけんの疲れない?」


「………なんのことですか」


「化けの皮」



ひまわり園を出てしばらく歩くと、迎えの高級車が停まっていた。


運転席に座っている女は男を誘うピチッとしたタイトなワンピース、凶器のように覗く太もも。

背も高く、折れそうな脚をしているが意外と近くで見ると筋肉がある。



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