踏み込んだなら、最後。




彼女はこうして、僕を“誰か”に重ねては可愛がるのだ。



「ふふ。かわいい子」


「…自分の息子みたいで?」


「………、」


「どんなに隠してたって分かるね。1度、子供を産んだ女は」



ふとしたときに母性が出る。

僕を匿ってそばに置いておくと決定付けた気持ちさえ、大きなものは母性のようなものだろ。



「特徴的な鼻してるなって、ずっと思ってたんですよ僕」


「…なにが言いたいの」


「…いーえ。とくになんにも」



鷲鼻って、そこまで少なくはないけど多いわけでもない気がする。

それも身近に連続で見ることは滅多にないはずだ。


鷲鼻、ついさっきも見たんだよなあ。


僕はいい奴じゃないから。
むしろあいつは嫌いだから。

そんな良いことしてやるかよ。


ましてや親子の絆などからいちばん遠い存在である僕が、他人の親子の絆なんかを繋げる立場になるだなんてまっぴら御免だ。



「泣かないで、美しいひと」


「…泣いてなんかいないわ」


「あなたと僕は似てる。すごく……似てるんだよ」



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