踏み込んだなら、最後。




「あ、由季葉。大丈夫だと思うけど門限は守れよ」


「うん」


「あとこれ」


「……え、これって…」



佳祐お兄ちゃんから渡された1万円札。

高校生のデート代にしては多すぎるお小遣いに、私は思わず躊躇ってしまった。



「なにがあるか分かんねーし、入館料だって月々の小遣いから出すのはキツいだろ」



今月もまだ始まったばっかだしな、と。



「お土産頼む。できれば食べ物がいいけど、保育園組と小学生組になんか安いキーホルダーでも買ってきてやって欲しい」



なるほど…、そういうことか。


明日からのおやつにもなるし、子供たちも喜ぶもんね。

私が水族館に行くって知って、みんな羨ましがっていた。



「うん。ありがとう。みんなで食べられそうなお菓子と、あの子たちにキーホルダー買ってくるね」


「余ったぶんは貰っていーぞ」


「え、いいの…?」


「ああ。俺ってほんと優しい兄貴だよなー」


「…ふふっ」



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