踏み込んだなら、最後。




そこに佳祐お兄ちゃんの優しさが含まれているのかと、私はありがたく受け取った。


誰かさんから早めの誕生日プレゼントにもらったワンピースは着なかった。

もちろん迷ったし、はやく着たい気持ちもあったけど、それだけは最初に見せたい男の子は千石くんじゃない。


……ごめんね。

本当に、ほんとうにごめんなさい。



「汐華さん!」


「あっ、こ、こんにちは…!」


「…こんにちは」



こんにちはって、おかしい……よね?


休日に待ち合わせて顔を会わせた瞬間の挨拶。

それをいちばんネットで調べておくべきだったかも……。



「じゃあ…行きましょう」


「う、うん」



スッと繋がれた手はスムーズ。

それは慣れたんじゃなく、実際の千石くんはこんな人なんじゃないかって思うものだ。



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