踏み込んだなら、最後。




「千石くん、クマノミすごく可愛いよ」


「………あっ、そうですね」


「…色も綺麗だよね」



私が邪魔をしてしまったみたいだ。

さっきからスマートフォンを手にして、私が気づかないとでも思っているのか隙あらば操作している。



「ごめんなさい、俺ちょっと電話してきますね」


「あっ…、うん」



なんか千石くん、変わった……?

最初の頃は手に触れるだけでもお互いに緊張していたし、一緒にいるときはスマホを触るなんかぜんぜんしなかった。


付き合ったらこんなにも変わっちゃうものなのかな…。


その変化が、どうしてか嬉しくないのだ。



「なにしてるんだろう、私……」



デートに来て、ひとり。

周りはカップルや親子で見にきているなか、ポツンと立ちすくんでいる。


それだけじゃない。

学校ではみっちーやかなりんと一緒に行動する機会がぐんと減って、どこかぎこちなくなってしまった。


これが付き合うってことなの……?


彼氏がいないときのほうが楽しかったと感じてしまうことが正しいのだろうか。



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