踏み込んだなら、最後。
「汐華さん、このあとって少し時間ありますか?」
「うん、あと2時間近くは大丈夫だよ」
「一緒に来てほしい場所があって…」
水族館を出た頃、15時半が近づいていた。
はっきり言って1日じゃ回り足りなかった気がする。
「来てほしい場所…?」
「はい。会わせたい人たちがいるんです」
人、たち……?
どこか気にはなったけれど、ここではうなずいて彼についていくことにした。
知らない駅で降りる千石くんの腕に引かれるまま、歩いてゆく。
「千石くん、ここって…」
「あ、いた。ねえ!連れてきたんだけど」
この人は、千石 真澄くん。
学校でも大人しいタイプで、あまり大人数でつるんでいなくとも嫌われるタイプではない。
女の子に密かに人気があって、密かに話してみたい男子生徒トップには入っていることだ。
そんな彼に連れられた薄暗い建物は、解体途中のビルのような場所だった。