踏み込んだなら、最後。




それは違うよ───って、単純に思ってしまった。


本気でそんなことを思っているの…?


ただ、見る限りあなたにとってはこれが普通なのかもしれない。

私が何か否定的なことを言ったなら「え、なんで?」と、堂々と言ってきそうだ。


どこからが本当でどこからが嘘……?



「ねえ真澄、今日あたしの家泊まり来てよ~」


「今日?お前いつも急すぎるよ」


「仕方ないじゃん気分なんだもん。…そーいうコトしても…いいよ?」



本人はその気じゃなくとも、女たちは私へと卑しい目を送ってくる。

ここでヤキモチや怒りを抱くのが彼女としての正しい感情表現なのかもしれないけれど、私はただただ気持ちが悪くて。


呆然と立ち尽くしたまま、別人のような千石くんを黙って見ていることしかできなかった。



「あ、あの、私はこれで…失礼します」



悪気がないことは分かる。

純粋に仲間たちに私のことを紹介してくれたのも、わかる。


でもそれを完全に「悪気はない」と思っていることが違和感なんだ。


価値観とか、考え方とか、私とは大きく異なっているよ。



< 122 / 280 >

この作品をシェア

pagetop