踏み込んだなら、最後。




でもそうじゃなくて。

そうじゃなくて私は、今日ずっとずっと寂しかった。



「でも俺は汐華さんが施設育ちって聞いても引かなかったよ」



ずいぶんと嫌な言い方をしてくる。

本当は引いてたところだけど───なんて、カッコ書きで言われたみたいだね。



「…ああいう付き合いは、やめたほうがいいと思うな」


「やめたほうがいい、って…?」



ほら、わかってない。


やめて、じゃなくて。
やめたほうがいい、なの。


彼女として言っているんじゃなく、言うなれば人として言っている。

そんな違いだ。



「…ごめんね。今日はもう、送ってくれなくて大丈夫」



なんにも楽しくなかったじゃないか。

水族館のチケット代が惜しく感じてしまうくらい、佳祐お兄ちゃんにも申し訳ない。


追い返されたってなんだっていいから、シロちゃんに貰ったワンピースを着て、シロちゃんのところに会いに行ったほうが後悔していなかったかもしれない。



「シロちゃんに……会いたい…」



ひまわり園に戻ってお土産を渡して、今日は疲れたからと嘘を言って部屋に閉じこもる。


おねがい。

こんなにも馬鹿な私を、きみだけは否定しないで───。



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