踏み込んだなら、最後。
「あ…、みっちー、かなりん…」
「ごめん。あたしら先生からちょっと頼まれちゃっててさー」
「そ、そうなんだ…」
「ほら行こ、みっちー」
この前はごめんね───、
私がそう言う前に理由付けをされて、ふたりは背中を向けて行った。
都合が良すぎる。
あのとき信じなくて、実際のものを見たら謝罪して許されると思っているなんて。
「こんなところにいたんですか」
つい顔を上げてしまった。
生徒たちに見つからない空き教室でお弁当を広げようとしていた私に落ちてきた、変わらない敬語。
「…探したよ、汐華さん」
そのあとやっぱりぜんぜん違う人だと、悲しくなる。
敬語をやめてと言ったのは私だけれど、人相までも変えて欲しいとは言っていない。
いつもはどちらからともなくメッセージを送って待ち合わせていたのだけど、私はあれから千石くんと連絡を取り合うことをやめた。