踏み込んだなら、最後。
「んーー…」
「なんでもいいから。似ている人を見かけたとか、なんでもいい」
その写真を見せると、だいたいの人間が眉を寄せて「もっと近くでよく見せろ」と言ってくる。
それほど、この街には光がなさすぎるのだ。
「ワカツキ……、聞いたことねェし見たこともねェわ」
「…そう。足止めして悪かったね」
“汐華”という姓ではなく、“ワカツキ”と名乗っていることは僕を拾ってくれた女から聞かされていた。
手がかりはそれくらいだ。
この狭いようで広すぎる街で、僕は絶対に見つけ出さなくちゃいけない。
「坊や」
今度は地下へとつづく階段の前。
こいこいと手招きしてくる、肩を出したみすぼらしい女。
「ひとを探しているの?」
「そう」
「教えてほしい?」
「知ってるならね」
「教えてあげよっか?」
まだ写真すら見てもいないのに、そんなことを言ってくる。