踏み込んだなら、最後。
振り返ることすらせず、この道だけは2度と通るものかと誓いながら足を進めた。
ここはそういう街。
嘘も欲も、さらけ出しては当たり前。
「あーー、そいつの情報ならオレ持ってるわ」
「っ!!今どこに、」
「教えて欲しかったらさあ、1コ頼まれごとしてくんね?」
そしてようやく進展があったと思えば、ニヤリと笑ってくる新たな男。
「この街でタダで貰えるモンなんかねーの、お前も知ってんだろ?」
ああ、知ってるよ。
今までだって何度危ない目に遭わされてきたか。
けど、その8割が嘘だってこと。
「…わかった」
そんな理由だけで断ることができたなら、僕はわざわざこの街にたったひとりで来ていない。
たとえどんなに騙されたって、少しでもワカツキに近づくことができるならと、これに関してだけは懸ける。
僕の覚悟はそれくらいだ。