踏み込んだなら、最後。




「この箱を無事に届けてくれるだけでいい。住所はここ、頼んだぞ」



受け取った箱のなかに何が入っているのかは、もちろん僕は知らない。


もし途中で何者かに勘づかれて捕まったならば裁かれるのは僕だ。

リスクぜんぶ被ってまで、僕は自らカモとなる。



「待てっ、頼むよっ、すこし見せてくれるだけでいいんだって……ッ!なあ!」


「あいつを逃がすな…!!ここいらじゃ手にできねえ葉っぱ持ってやがるぞ……!!」



追いかけてくる人間は警察ではない。

クスリがないと生きていけないような、それで生計を立てる依存したゾンビたち。



「くそっ、クロだ…っ」



わかってはいた。

いたけど、ほんの少しの手がかりも逃したくないんだよ。


この街にいる、名前はワカツキ。


最初の頃はその情報だけで見つけ出せると思っていた。



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