踏み込んだなら、最後。
甘かった。
この街には通用しないことのほうが多すぎたんだ。
「はっ、はあ……、…無事に届けたよ、」
「うわ、おまえマジでやったのかよ。褒めてやるぜ」
「そんなのいらない。さっさと教えろよ、ワカツキの情報」
僕に頼んでいたことすら、すっかり忘れているような面持ちだ。
こいつもあの箱を誰かから受け取って、いま僕が完了した仕事を頼まれていた側なんだろう。
「オレは10年このあたりにいて顔見知りも多いけどよ。ワカツキって名前も、この男も、1度たりとも見たことねーぞ」
「……嘘ついたってこと?」
「いいや。これがオレから渡せる情報だっつーこと」
「……………」
そんはずはない。
この男がこの場所にいて、実際に会ったことがあると言った女を僕は知っているんだ。