踏み込んだなら、最後。
「…連中たちに抜けたいって言ったらこのザマ」
連中、たち…。
あえて“仲間たち”とは言わなかった千石くんを私は最初に見た。
「これでわかった?俺が身を置いてる場所は、そーいう場所なんだよ」
大人数から集団リンチに遭ったような傷だ。
今が夏休みで良かったと思ってしまうほど、千石 真澄からは想像もできない姿になってしまっている。
なんとか振り切って今なんだろう。
「抜けようと…してくれたの…?」
「だって“やめてやめて”って、いつもうるさいから汐華さん」
会ってくれなくなっちゃったし───、
騙されてもいいから、私はこれが千石くんの本心だと思うことにした。
「依存してんのは俺かもね」
「……千石くん、」
「キスしてよ、汐華さん」
そしたら治るから、なんて目で見つめてくる。
私たちの関係は不可思議なもので、奇妙すぎるもので、なにかあれば呼ばれて頼られて、私は騙される。
お互いに好きでもないのに、そんなことをする。
でも放っておけないの。
どうしてか、放っておけない。