踏み込んだなら、最後。




「由季葉?はやく座れよ、カレー冷めるぞ」


「佳祐お兄ちゃんごめん…、友達に呼ばれちゃった…」


「友達?今から?」


「…うん。いろいろあってかなり落ち込んでるらしくて、……もしかしたら泊まってくるかも」



最低だ、最低なの。

使えるものぜんぶを理由にして、呼び戻そうとしている最低な人間。


カレーがあるよ。

ナナミちゃんとリトくんが一生懸命つくってくれたんだよ。

シロちゃんのために作って待ってるよ。


そんな言葉を持って、私は白色のワンピースを着て彼に会いにいく口実を作った。



「…わかった。気をつけろよ。なにかあったら必ず連絡することな」


「…うん。行ってきます」



スマートフォン、ずっと充電しておいてよかった。

100%、明日まで持つ。


お金を多めに持って、身分証だったりは逆に置いて、私はひまわり園を出た。


たとえ見つけられなくても、見つけてもらえるような気がした。

このワンピースを選んでくれたのはシロちゃんなのだから、その本人であれば。



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