踏み込んだなら、最後。
「────………シロちゃん」
待てゴラァ!!と、奥から聞こえてきた叫び声。
逃げるようにこちらに走ってくる人影。
その足取りは私を見て止まったんじゃなく、私の言葉にまずは止まった。
「あのガキッ!ぜってえぶっ殺す!!」
「どこ行きやがった…!!さっさと出てこいオラァ!!」
複数人の足音と怒号。
場が悪いと唇を噛んだなら、私なんか放って逃げるを優先させれば良かったのに。
腕をつかんで、一緒に走ってくれる。
「あ…っ」
転がっていた空きカンにつまずいて、グラッと前のめりに傾いた私の身体。
流れるままに腕のなか、シロちゃんはそのまま背中を預けて物陰に身を潜めた。
腕を捲ったワイシャツに黒いベストを組み合わせたシロちゃんの姿は、闇にはよく溶ける。
「……っ」
こんなにも密着して抱きしめてくれるのはきっと、全身まっしろな私を隠すため。