踏み込んだなら、最後。




ねえシロちゃん。

男が女に服をプレゼントするときはね、“脱がしたい”っていう意味があるの、知ってた…?



「彼氏がいるってのに他の男のために泣いて、挙げ句そいつに抱かれてんだよきみ」



こんな皮肉めいたことを言われて。


呼んでくれても1回だろう。

その1回呼んでくれたなら幸せだと、私は期待していた。


それが驚いた。

1回どころじゃないんだもん。




「ユキちゃん、ゆきは、…っ、由季葉」




何度も何度も。

ずっと、ずっと。


それしか話せなくなっちゃったのかって心配になるくらい。



『あのね、いつかユキちゃんがぼくのお嫁さんになったらね、ユキちゃんのお名前はぼくとおなじウルシハラになるんだって』


『…へん?うるしはら、ゆきは』


『ううん。かーいい。ぼくのたったひとりの……かぞく』



17歳、高校2年生の8月。


今日味わった初めての痛みと幸せは、この先も後悔だけはぜったいしない───。








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