踏み込んだなら、最後。
だったら僕だって言ってやろう。
あんたを抱きたいと思うことは、猿のメスに対して抱きたいと思うくらいの確率だと。
「約束が違いますよ、おねえさん」
自分から出た低い声は、昨日までの僕ならばここまで圧力を持ってはいなかった。
ここで僕が追い払われることは、至ってこちらとしては不都合だ。
まだ目的を果たせていない。
あんたは十分味わえたかもしれないけど、僕はなんにもクリアしてないんだよ。
「僕たちはお互いに利害の一致で契約したはずだろ」
僕は従順に服従してきたつもりだ。
あなたの夢を、叶えてあげたつもりだ。
17歳の男子高校生とひとつ屋根の下、まるで親子のように過ごすこと。
僕はあなたが握っているワカツキの情報を渡してもらうため。
あなたは愛してやまない何者かとの疑似生活を味わうため。
そんな契約を、出会った頃に交わしたはず。