踏み込んだなら、最後。




「そんなにもワカツキを探し出して、いったいどうしたいのよ」


「…らしくないこと、聞くなよ」



興味を持ってくるだなんて。
そこを探ってくるだなんて。

あなたはお高く止まって謎だらけ、こちらが踏み込もうものなら突っぱねる。


そんな女だったから僕も心地が良かったんだ。



「じゃあひとつ、あなたの過去を教えてくれません?」



教えてくれたら教えてあげるから。

駆け引きってそういうものだろう。
それを僕に教えてくれたのは、あなただ。


名前も知らないんだよ、僕。


名前も知らない女と一緒に暮らしてるなんて、奇妙すぎる。



「16歳で子供を産んで、捨てたわ」



言ってくれないと思った。

立ち上がってマンションを出ていくんだろうなって思ってたのに。


自分から言ったくせ、なにをそんなに動揺しているんだよ、タバコなんか咥え出して。



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