踏み込んだなら、最後。
「抱きしめてやろっか」
「……へっ」
「あれ?嬉しくない?昔は喜んでたのに」
頬っぺにキスもしたし、
いっしょにお風呂だって入った───、
軽やかに言ってしまうシロちゃんの辞書には、どうやら“年頃”という言葉は存在しないようなのだ。
「いっ、いいよ…!もう高校生だから…」
トンっと、シロちゃんを押し退ける。
思ったより傾かなかった身体に、ドクンと心臓が深く鳴った。
「こっち向けよユキちゃん」
「…食器、洗うから…」
「照れてんの」
「っ、…落とすと危ないからそっち、行ってて」
この施設で最年長な私たち。
たとえ家族のように過ごしていたとしても、顔も違うし身体だって違う。
とくに今みたいなとき、私にとってシロちゃんを“かぞく”だとは思いにくくなってしまったことが複雑だった。