踏み込んだなら、最後。
脱ぎ捨てられた服。
くしゃりとシワを作るベッドのシーツ。
レースのような薄いブランケット1枚が、なんとか私のカラダを隠してくれている。
この日、私は初めてを奪われたのだ。
ううん。
奪われた、は、ちょっと違う。
捧げた、って、言いたいな。
「想像してたよりあっけなかったでしょ」
ハジメテってそんなもんだよ───、
くやしい。
私より先に知ってた、みたいな言い方。
「……ふゆ…、みたいだった…」
「…冬?」
「うん…、わかんないけどね……冬、みたいだなって…」
人肌が恋しくなって、誰かと寄り添うぬくもりから離れられなくなる。
外から家のなかに入るとほうっと一息つきたくなって、そんな一瞬に幸せを感じるみたいな。
でもそんな冬は、わりとすぐに気づいたときには終わっちゃってるよね。