踏み込んだなら、最後。
考えないようにした。
千石くんにしたみたいに、最終的には無理やりにでもひまわり園に連れ帰っちゃえばいいんだとも企んで。
「わあ……!」
「さっきの展望台も良かったけど、ここもオススメなんだよね」
「うん…!すごくきれい…!」
「入場料無料だし、穴場だから貸し切り」
この建物と雑踏だらけの街でも夕日は輝くんだ。
夕日はどこだって照らしてくれるんだ。
とあるビルの屋上は、今日いちばんの特等席な気がした。
「ユキちゃん」
「うん…?っ、…んっ」
ふわりと、後頭部に回った手。
引き寄せるようにやさしく、それはもう優しく唇を塞いでくれた。
もっともっと欲しい。
そうねだるように、すぐに離れてしまいそうなシロちゃんへと自分から押し付けにいく。
「ンン…ッ、ふっ、ぁ」
にゅるりと侵入してくる熱い舌。
逃げるつもりなんか最初からないけど、私が逃げれば追うように絡ませてくるから、そんなものが嬉しくてわざとする。
涼やかに髪を揺らす仲秋の風は、なんにも私たちの熱を冷まそうとしなかった。