踏み込んだなら、最後。
僕に着ろと言って渡してきたスーツだってそうだ。
あれはこの街に相応しいからとかではなく、もしかすると僕を「自分の監視元だ」と、誰かに知らしめて守るためでもあったんじゃないか。
「でも、たぶん、あなたのことはもう上に情報が回り始めている。時間の問題ね」
「……僕はもう……、出られない…?」
「あたしの二の舞になるか、兄さんの二の舞になるかのどちらかよ」
「…二の舞って……」
結局、出られないということだ。
「っ、せめて僕の大切な存在たちだけは守って……!!たのむ、なんでもするからっ、だからひまわり園のみんなは…っ、由季葉だけは───、………、」
言葉が止まって、自分の情けなさにどうしようもなく泣きすがりたくなった。
どうしてそんな顔をしているんだ。
そんな顔で僕を見ないでくれよ。
僕を否定する顔で、見るなよ。
「あたしとまったく同じ。あたしも…、かつてそんなふうに泣いて叫んで、どうにかしたかったわ」
似ている人間たちは、引き合う運命にある。
意識していないところで引き合わせられてしまう。