踏み込んだなら、最後。




なぜかというと、安心するからだ。

自分を見ているみたいで安心して、自分より下になれと陥れるチャンスを感じるからだ。



「ここは牢獄よ」


「………、」


「死刑囚になりたくなかったら、死ぬまで利用されて使われつづける。ここに幸せなんか……ないのよ」



逃げ道なんかない。
もしある場合は、誰かが囮になるしかない。

それが、游黒街。

一言で表すなら地獄だ。



「あたしの場合は、そこで助けてくれた人がいたの。それが───ワカツキ」


「……だれ、なんだよ…、ワカツキって…、ワカツキって誰なんだよ…っ」




「────あたしの兄さんよ」




もしかしたらって、もしかしたらそうなんじゃないかって、僕は昔から小説を読むことが好きだったから。

伏線とかが出てくると結局ここに繋がるんだろって考察は、わりと当たっていることが多かった。




「ワカツキは、あたしと血の繋がった……その兄さんのこと」




なんだよ……、

だったらもっと早く言えよ…。


座りながらも自分の身体が脱力していくのが分かった。



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