踏み込んだなら、最後。




その頃、外の世界で普通に生きていたお兄さんには4歳になる娘がいた。

この女の息子と同い歳になる娘が。


男手ひとつ、慎ましやかに暮らしていたと。


当時から奥さんがいなかった理由は、それも游黒街が関わっていたかは今も不明。



「助けてくれた。兄さんがこの街に戻る代わりに、こっちの人間はあたしの家族に危害は加えないと……そう約束して兄さんも了承───、っ!」


「ふざけるな……ッ!!」



僕が胸ぐらを掴んだ反動で、女はベッドに背中を預けた。

のしかかってまでも、ここまで世話をしてくれた恩人に対して怒りを爆発させる。



「あんたのせいで由季葉はずっと泣いてたんだ!!あんたは自分の家族を守ったかもしれないけどっ、そのおかけで人の家族ぶっ壊してんだよ……!!」



つながっている。
みんな、みんな、繋がっている。

この女とワカツキが兄妹で、ワカツキの娘はユキちゃん。


そしてこの女の息子が……千石 真澄。


汐華 由季葉と千石 真澄は、いとこ同士。

言うなれば本当の家族だ。



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