踏み込んだなら、最後。




恨めないじゃないか、そんなの。

殺されたとか自殺とかだったら、そこまで追い込んだ人間を今度は見つけ出す目的ができるけど。


癌って……。


僕はもう、結局なにも果たせられなければひまわり園に戻ることだってできない。


僕の情報は上に回りつつあると、彼女はさっき言ったんだ。

この女と関わってしまったことが吉であり、何よりの凶だったのかもしれない。



「……シロウ、」



この涙すら、僕のことを嘲笑っているみたいだ。



「……よかったよ、僕には本当の家族なんかいないから。あんたが向こうを守ってさえくれれば……これ以上の被害者を出すことだってない」



頼る人間なんかもいない僕だから。

母親も父親もおばあちゃんもおじいちゃんも、いとこだって知らない僕だから。


ここで生きてここで死んでいくには、いちばん相応しい人間だ。


そんな最大の皮肉を返して、すすり泣いた。








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