踏み込んだなら、最後。




「真澄、悪いな。せっかくお前がいる日くらいは料理をしてやりたいんだが…」


「過労で入院してた父親に作らすほど、鬼畜じゃないから俺」


「でもお前、ちゃんと食べていたのか…?あまりゴミもないようだし…」


「食べてたよ。…周りに助けられてた」


「……そうか」



今日の夕飯は出前。

まあ、そもそもうちはデリバリーとかコンビニとかじゃないほうが珍しいんだけど。


過労になるくらい働き詰めなことは知っていたし、この男は俺の親にしては誠実で優しすぎるところがある。



「俺バイトしててさ、これからは少しでも生活を助けるから」


「いや、息子にそんなこと…」


「倒れられるよりマシ。…だから父さんも、あまり無理するなよ」


「……ありがとうな、真澄」



過労で倒れて救急搬送されたと連絡が入ったとき、怖かった。

小さな建築会社で働く父親は、体格もそこまで良いほうじゃない。



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