踏み込んだなら、最後。




真っ直ぐ澄み渡った、空……。

─────真澄。


自分の名前の由来すら、俺は今日初めて聞かされたんだ。



「ごめんな…、事情があって母さんの名前も教えてやれないんだ。写真もない。でも……すごく綺麗なひとだ。
父さんが一目惚れした、強くて綺麗なひとが真澄の母さんだよ」


「っ…、……っ…」


「鼻がお前に似ていて、笑った顔も似ている。…170センチに届かなかった身長は……父さんに似てしまったかな」


「っ…、うるさいな…っ」



サラッと人のコンプレックスいじってくんな。

168センチは170センチと一緒なんだよ。

いまの日本人でそこ気にする人間なんかいないから。



「父さん今まで、仕事に逃げていたよ。これからは真澄との時間を最優先にする。…今度ふたりでドライブにでも行こう」



ああ、しょっぱい。

牛丼がこんなにしょっぱいこととか、あんのかよ。


ふたりだけの食事でも、初めて美味しいと感じることができた───。



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