踏み込んだなら、最後。




かつて「隠し通すのもひとつの手だ」と見つめてくれたあの目は、私を試していたんだと今になって理解した。

私がそれでも気持ちを言うことを、彼らは信じたかったんだと。



「……ごめんなさい…」


「もう終わり。ふたりとも無事で良かった。…よしっ、帰ろう。車いくよ」


「…うん」



けれど、絃お姉ちゃんと旦那さんの背中を見つめて立ち止まったままなシロちゃん。

私も少しだけ歩いてから、振り返る。



「シロちゃん…?」



するとシロちゃんは頭を下げた。

私でも絃お姉ちゃんでもなく、その先にいる黒ネクタイ黒スーツの男に対して。


誰よりも権力を持っている、裏社会に生きる唯一の光に。



「…僕の勝手な行動の尻拭いをさせてしまったこと、本当にごめんなさい。…でも、もうひとつ、もうひとつだけ……あなたに頼みたいことがあるんです」



言え、と。

沈黙がそう言っている。



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