踏み込んだなら、最後。




「千石 真澄の母親が……あの街にいます。彼女はそこを出られないし、自分でもそれは分かってる。
けどせめて、せめて……彼女が息子に会えるようにだけでも、してもらえませんか」



彼の力を使って、借りてまで、シロちゃんは他人の母と子の絆を結ぼうとしている。

繋げようとしているんだ。


思わず私も同じように頭を下げた。



「私からもっ、私からもお願いします……!」



千石くんと彼女の関係は、私にはハッキリとよくは分からない。


でも単純に、似ていた。

すごく顔が似ていたし、やっぱり私自身も彼らには笑顔でいて欲しいって思うから。



「さっさと車に乗れ。俺は早く帰って絃とアイス食いてえんだよ。…明日からまた忙しくなる」



ぶっきらぼうに放って、彼は足を進めてしまう。

「オッケーだって」と、代わりに通訳してくれたのは絃お姉ちゃんだった。


絃お姉ちゃんの旦那さんが運転する車の後部座席、私たちはひまわり園に着くまでずっとずっと手を繋いでいた。



─────おかえり、シロちゃん。



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