踏み込んだなら、最後。




「じゃあシロちゃんは…?シロちゃんも本当のお母さんとお父さんに会いたい…?」


「…僕は写真すらない。会ったところで親だなんて思えねーよ」



私より前にひまわり園にいたシロちゃん。

物心つく前から預けられていた彼が持っている情報は、“漆原”という苗字ただひとつ。



「でもいーんだよ僕は。…僕には……、きみさえいればいい」



1度だけ、特別養子縁組にシロちゃんが選ばれたことがある。

とても人の良さそうな夫婦で、きっと幸せになれるって誰もが思うような。


でも、断ったんだ。


シロちゃん自身が「行かない」と、「行きたくない」と、断った。



「なのに離れるって……おかしいよ」



なにをするために、シロちゃんは今更ひまわり園を出ていこうとしているの…?


だったら私も連れていって。

いっしょに、連れていって。



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