踏み込んだなら、最後。
「まあ、シロの場合は由季葉に対してだけだろーけどな」
「え、じゃあ佳祐お兄ちゃんのときは誰に対してだったの…?」
「…………忘れた」
あ、嘘だ。
家族をしているんだから、こんなことも分かっちゃう。
佳祐お兄ちゃん、いま嘘ついた。
なんとなくは分かるよ。
絃お姉ちゃんに対してだったんじゃないかなって。
「やっぱり私たちは…、本当の家族にはなれないのかな…」
ごっこ、でしかないのかな。
真似っことか、“ふり”とか。
また自分が右手で左肘を触っていたことなんて。
「由季葉、こい」
「わっ…!け、佳祐お兄ちゃん…!私もう子供じゃないんだよ……!」
「だとしても、大切な家族がそんな顔してたら兄貴として放っておけないだろ」
「っ……」
抱きしめられた腕のなか。
恥ずかしさはもちろんあったけれど、だんだん落ち着いてくるんだから不思議だ。