踏み込んだなら、最後。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
ぽんぽんと、優しく背中と頭が叩かれる。
私たちは寂しい子なんかじゃない。
私たちは捨てられた子でも、愛情を知らない子でもない。
佳祐お兄ちゃんの腕はこんなにも温かいのだから。
「……佳祐お兄ちゃんがこんなことするなんて意外…」
「ああ。これは絃からの受け売りなんだ」
私もあのとき、こんなふうにシロちゃんを抱き締めてあげるべきだったのかもしれない。
彼が寂しい気持ちを感じていたのだとするなら。
ほら、いざというときビビって何もできない性格。
「佳祐お兄ちゃん…、」
「ん?」
「…游黒街って、知ってる…?」
身体がそっと離されたタイミングで私は聞いてみた。
眉間を一瞬だけ寄せた佳祐お兄ちゃんは、けれど首を横に振る。