踏み込んだなら、最後。
「ここ、法律なんかなーんもねェから」
「そんなの…、」
「ってことはつまりだ。知っちまった人間は常人には戻れねェのも……わかるよな?」
「や……!」
親切な案内人なんかじゃなかった。
この男からタバコとクスリの匂いがぷんぷんしていたこと。
隠されていた街を見せられて、この男の本性までもが一緒に暴かれてしまった。
「ヒヒッ。こーいう子がいっちばん堕ちていくんだよなァ」
なんとか逃げようとはしたけれど、この状況での逃げ方のほうが難しいことに気づく。
成人済み男と女子高生。
どちらのほうが力があって有利かだなんて、考えなくても分かることだ。
逃げ道すら分からない。
前が暗ければすでに、後ろも暗い。
「やだっ、やめて…っ」
「おいおい、ここまで来といて今更さァ」
「───さすがに通り道ではやめろよ」
なんの声だったとしても、いまの私に第三者の声は希望だった。