踏み込んだなら、最後。
シロちゃん、似合わないよ。
たとえスーツを着て背伸びしたところで、そんな人と一緒に歩くなんて似合わない。
「まって、シロちゃ───」
「さっきから誰と間違えてる?ここはきみのような子が来ていい場所じゃないから」
名前すら呼ばせてくれない。
私は今日、ちゃんと君の名前を呼べもしなかった。
そして私の名前も、呼んでくれない。
「シロウ、戻りたかったら戻っていいのよ?」
「…なに言ってるんですか。僕はあなたのもの、ここを選んだのは自分の意思」
「またずいぶんと可愛いこと言ってくれるじゃない」
行ってしまう。
私のことなど気にもかけないで、振り向きもしないで、クスッと笑った知らない女性と一緒にあの街へ。
私の目にはハッキリと見えた。
首のうしろを触ったシロちゃんが。