踏み込んだなら、最後。
けれど誰よりも愛情深いひと。
幸せそうな絃お姉ちゃんを見ていれば、いらない心配と不安に変わる。
「正直、俺たちはお前のことを疑ってる。もしお前があの街と少しでも関係してんなら、俺が最終的に出なくちゃならない」
「っ…」
「だが、ハッキリ“そうじゃない”って言うなら俺たちはそれを信じてやる。これ以上の詮索もしねえよ」
あ……、こんなのしたって意味がない。
すでに分かってる。
この人は、わかってるんだ。
事を大きくしたくねえなら隠し通すのもひとつの手だぞ───、
眼差しが、そう伝えてきた。
「いって…ない」
顔を上げて、言う。
もう行かない。
もう、あの場所へは行かない。
シロちゃんは向こうを選んだんだ。
ここじゃなく、あの街を。
私じゃなく、あのひとを。
私はただ────……振られただけ。
「……わかった。信じるよ」
ふたりは今日のことを無かったことにしてくれた。
あのね、絃お姉ちゃん。
こんな中途半端で曖昧な家族だったらいっそやめたいって、今日初めて思っちゃったんだ私。