踏み込んだなら、最後。




「ド、ドリンクバー…、行ってきます」


「あっ、由季葉あたしのもおねがーい!炭酸ならなんでもいーから!」



自分から話しかけに行くこともできない私と違って、ふたりはさっそく打ち解けてデュエットなんかしちゃってる。


施設育ちという理由で大げさに気を回してこない友達たちにはいつも感謝しているけれど、今日のカラオケはちょっと……。



「……帰りたい…」


「じゃあ、一緒に抜けませんか…?」


「えっ」



ドリンクバーで悩むふりをして、せめて時間をつぶしていた私の隣。

話しかけてきたのは合コンメンバーである男の子だった。



「俺、千石(せんごく)です。千石 真澄(せんごく ますみ)」



この人もあまり乗り気じゃないオーラを放っていた唯一のひとだ…。


はしゃいでるかなりんの隣に座っていて、マイクもぜんぜん持たないでジュースばかりを飲んでいた。

たまにチラチラと目が合っていたから、私と似たタイプなのかなって勝手に思っちゃったりして。



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