踏み込んだなら、最後。




泣いている子供の声を聞いてしまうと、自然と身体が動いてしまう。

施設でもしょっちゅう喧嘩や言い合いがあるから、しゃがんで今みたいに優しく聞いてあげることには慣れていた。



「ありがとうね2人とも。親御さんから連絡もあって、すぐ来るそうだから安心して」


「よかった…」


「これ、お礼と言ってはなんだけど」


「あ、ありがとうございます…」



交番のお巡りさんから私と千石くんに渡されたお菓子。

帰って妹や弟たちにあげようと、ありがたく受け取った。


結果として18時半を過ぎてしまい、だいぶ帰り道は暗い。



「送ります、汐華さん」


「えっ、だ、大丈夫だよ」


「いや、もうけっこう暗いので。お巡りさんも夜道は気をつけてって言ってたじゃないですか」


「………うん」



私が複雑に感じているのは、そこじゃない。

意地でも私を送り届ける気でいる千石くんには、前もって説明することをあえて辞めてみた。


どんな顔するかなって、どんな反応をするのかなって。



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