踏み込んだなら、最後。
「ご、ごめんねなんか…。いつもこの調子で」
「いえ、すごい楽しくていいなって思います」
子供たちが庭で元気に遊んでいる姿を見つめて、千石くんは瞳を伏せた。
伏せた先にある私の手。
たぶん、無意識だったんだろう。
スッと掴んでは握ってくる。
「っ、あの、」
「っ…!!ごっ、ごめんなさい…!なにやってんだ俺…!!ほんと他意はなくてっ」
「…ううん、大丈夫」
「あっ、じゃあ…また明日」
「……また、明日ね」
嫌ではなかった。
どうして触ってきたんだろうってことのほうが知りたいくらい。
こんなものは時間の問題。
この人ならばシロちゃんが抜けてしまった寂しさを埋めてくれる。
左肘を右手で触りながら、私は「また明日」を言った。
「汐華さんのお弁当は施設の方が作ってくれるんですか?」
「あ、うん。私もいつも一緒に作ってて…」
「え、すごい…、美味しそう」