踏み込んだなら、最後。
虚々実々
知らない腕に抱えられていた。
ずんずん進んでいくたびに、目に映る景色は移り変わってゆく。
あれは、なあに?
あの子は、だあれ?
思った気持ちを陽気に言ったところで、返事は一向に返ってこない。
ただ、わかっていたことは。
この人は自分の親ではない。
このひとは、わたしのパパじゃない。
『その他の手続きはこちら(保健所)で進めておきますので。あとはよろしくお願いします』
『わかりました』
『虐待やネグレクトを受けていた形跡はありませんが、ただ、お父さんのほうが“もう育てられない”…と』
『…そう…ですか』
知らない場所、知らない人たち。
すると大きな影は、小さな私に合わせるみたく縮んだ。