踏み込んだなら、最後。




帰り道だけじゃなく、お昼休み。

ふたりだけで中庭のベンチに座ってお弁当を広げる時間にもだんだん慣れてきた。


たまにぶつかる肩に気づくだけで緊張してしまう私とは反対に、こういうときはそこまで照れない千石くんは不思議だ。



「……千石くんは、」


「俺、…父子家庭で。母親がいないからご飯とかはとくにテキトーなんです」


「そうだったんだ…」



そういえばいつも購買やコンビニで買ったもの。

パンよりご飯が好きなのか、必ずおにぎりを食べていた。



「よかったら作って来ようか…?」


「え、」


「いつも保育園組とセットで作るし、ひとり増えたところで───、あっ、いやっ、ごめんね勝手にこんなこと…!」



ここまで言ってしまってから、なにを言ってるのと恥ずかしくなる。


頼まれてもいないのに勝手にやろうとしてしまうところ。

考えて出す言葉は躊躇うくせ、その場で思ったことはポロッと言ってしまうところ。


これは私のよくない部分だ。



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